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共同親権とは?離婚後も両親で子育てできる新しい仕組み
今回は、2024年に成立した改正民法により、2026年から施行予定の「共同親権」制度についてご紹介いたします。共同親権は、離婚後の子育てに新たな選択肢を提供するもので、これまでの「単独親権制度」とは大きく異なる点があります。本稿では、制度の概要、導入の背景、そして実際に制度を利用する際の留意点について、分かりやすくご説明します。
◇なぜ共同親権が導入されるのか◇
これまでの日本の民法では、父母が離婚する場合、どちらか一方を親権者に指定しなければならない「単独親権制度」が採用されていました。この制度は、離婚後、親権を持たない側は法律上の決定権を失い、子どもの生活に関与しづらくなるという問題がありました。また、父母が離婚してもどちらの親も子どもにとってかけがえのない存在であるという考え方とは相容れず、また国際的にも主流ではありません。日本は「子どもの権利条約」の締約国であり、条約では、子どもが両親と関係を持ち続けることが重要とされています。
こうした背景から、2024年に民法の改正が行われ、2026年からは離婚後も父母が「共同親権」を選択できるようになります。
◇ 共同親権とはどういう制度か◇
共同親権とは、離婚後も父母の双方が親権者として、子どもの教育、進学、医療、居住地の変更などの重要な決定に関与する制度です。
ただし、日常的な子育て(食事、送迎、衣類の管理など)は、通常、子どもと一緒に暮らしている方の親が主体的に行うことができます。すべての決定を都度両親で話し合う必要があるわけではありません。重要事項については原則として合意が必要とされますが、合意に至らない場合には、家庭裁判所が判断することになります。また家庭裁判所の決定を待っては子供の利益を害するような場合、例えば緊急を要する手術や入学手続きなどは子どもと一緒に暮らしている方の親が単独で決定できます。
◇共同親権の選択はどうやって決まるのか◇
離婚時、父母が共同親権を希望する場合は、協議によりその旨を定めることができます。話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所が「子どもの最善の利益」を基準に、共同親権がふさわしいかどうかを判断します。
そのため、すべてのケースで共同親権が認められるわけではありません。たとえば、DVや虐待の疑いがある場合には、単独親権とされることが想定されます。
◇同親権のメリットと注意点◇
メリットは。子どもが両親と継続的に関わることができ、精神的な安定につながることが期待されます。また育児や教育に関する責任を両親で分担できますので、これまでのように親権を失った親との関係が断絶されることを防げることができます。
注意点は、重要事項に関して意見が対立した場合、子どもの生活に影響が出る可能性がありますし、DV等がある家庭では、共同親権が支配や干渉の手段として悪用される懸念もあります。 さらに、進学や医療などの手続きにおいて、両親の合意が必要になる場面があるため、実務的な負担が増すことも予想されます。
◇実際に共同親権を選ぶ際のポイント◇
共同親権を選択する場合は、親権の分担や決定の方法について、事前にしっかりと話し合い、書面などで合意しておくことが重要です。たとえば、 ・子どもの居所(どちらと住むか) ・進学や医療に関する合意の取り方 ・定期的な連絡や面会交流の方法 ・意見が分かれたときの解決方法(調停・審判など) などを明確にしておくことで、後々のトラブルを防ぐことができます。
また、家庭裁判所においては、今後「共同親権の運用に関する判断基準」や「具体的な分担の枠組み」が整備されていく予定です。これにより、より実務的に円滑な制度運用が期待されています。
親権や子どもの将来について不安がある方は、ぜひ弁護士にご相談ください。当事務所では、依頼者の状況に応じて、制度の選択肢やリスクを丁寧にご説明し、最適な解決に向けてサポートいたします。